会議で自分が話し始めると、場の空気が少し重くなる気がする。相手の眉間に、ほんのわずかな力が入るのが見える。
それに気づいてしまってから、話すのが怖くなった人へ。
この記事は「イライラさせてくる人」の話ではありません。自分がイライラさせている側かもしれないと思っている人のための記事です。

最近、僕が喋ると会議の空気が固まる気がするんだ……。悪いこと言ってるつもりはないのに、なんでなの?

それに気づけているなら、直せるよ。今日は「イライラさせる人」の話じゃなくて、「させてしまうかも」と悩んでいる側の話をしよう。
「またやってしまった」と思う夜に
打ち合わせが終わって、席に戻る。誰に責められたわけでもない。それなのに、さっきの自分の話し方が頭の中で再生される。
「あの言い方、伝わってなかったな」
「途中で相手が黙ったのは、呆れられたからじゃないか」
家に帰ってからも、ふとした瞬間に思い出す。そして検索する。「人をイライラさせてしまう」と。
まず、ひとつだけ言わせてください。
そうやって気にしている時点で、あなたは本当に厄介な人ではありません。
現場を30年見てきましたが、周りを本気で消耗させる人は、まず自分を疑いません。「なんで伝わらないんだ」と相手のせいにして終わります。自分の話し方を思い返して眠れなくなる人は、その反対側にいます。
ただ、気にしているだけでは何も変わらないのも事実です。だから、直せるところだけを見ていきましょう。
イライラされるのは、性格ではなく伝わり方の問題
「自分は人に嫌われる性格なんだ」と結論を出してしまう人がいます。
これは、いちばんもったいない考え方です。性格は変えられません。変えられないものを原因にすると、打つ手がなくなります。
現場で「あの人と話すと疲れる」と言われている人を観察してきて分かったのは、問題の大半は性格ではなく、ごく限られた場面の、ごく限られた癖にあるということでした。
- 話すときの順番
- 相手が待っている時間の長さ
- 決めたことを、あとで変えるかどうか
このあたりです。全部、行動です。行動なら直せます。
そして、直すべき癖はたいてい1つか2つしかありません。全人格を作り替える必要はないのです。
考えながら話す人の頭の中で起きていること
私自身の話をします。
私は長いあいだ、考えながら話す癖がありました。
質問されると、頭の中が整理できていないまま口が動き出す。話しながら考えているので、話に流れがありません。結論も途中で変わります。
「A案がいいと思います。……いや、でもBのほうが。あ、でも予算を考えるとやっぱりAかな」
こんな話し方です。
本人の頭の中では、ちゃんと検討しています。むしろ真剣に考えているからこそ、口に出しながら比較している。悪気はまったくありません。
でも、聞いている側からするとこうなります。
- 話がどこに向かっているのか分からない
- 結局この人は何がしたいのか分からない
- さっき言ったことと違う。じゃあどれを信じればいいのか
説得力がないのです。内容が間違っているわけではないのに、聞き手には何も残らない。
そして厄介なのは、言うことがコロコロ変わることが、相手に「この人は適当に喋っている」と受け取られてしまう点です。真剣に考えているのに、逆の印象を与える。ここが、考えながら話す癖のいちばん損なところでした。
私がそれに気づいたのは、自分で気づいたからではありません。指摘されたからです。指摘してもらえたことは、今でも運が良かったと思っています。多くの人は、指摘されないまま何十年も同じことを続けます。

うわ……。それ、まさに僕だ。ちゃんと考えてるのに、なんで伝わらないんだろうって思ってた。
相手がイライラするのは「内容」ではなく「待たされること」
ここが、この癖のいちばん大事なところです。
相手は、あなたの意見の中身に怒っているわけではありません。
結論が出てくるのを待たされていることに、疲れているのです。
人は、話を聞くとき無意識に「この話はどこに着地するのか」を探しながら聞いています。着地点が見えていれば、多少長い話でも平気で聞けます。逆に着地点が見えないと、たった1分でも長く感じます。
考えながら話すと、聞き手はずっと着地点を探し続けることになります。しかも探している途中で結論が変わる。これが積み重なると、「この人の話を聞くのは疲れる」という印象になります。
同じ会話をしているのに、見えている景色がまるで違います。自分の側だけを見ていると、この差には一生気づけません。

相手は内容に怒ってるんじゃない。着地点が見えないまま待たされることに疲れてるんだ。ここが分かると、直す場所がはっきりするよ。
話す前の30秒でできること
では、どう直したか。私がやったのは、大がかりなことではありません。
1. 結論を先に置く
いちばん効いたのはこれです。
考えがまとまっていなくても、今の時点での結論を最初に言ってしまう。
「A案がいいと思います。理由は3つあります」
こう言い切ってしまえば、聞き手は着地点を持てます。あとから理由を並べるあいだ、相手は待たされません。
「まだ決めきれていない」ときも同じです。
「今はA案に傾いています。ただ、予算の点だけ確認させてください」
これなら、迷っていることまで含めて着地点になります。迷いを隠す必要はなく、迷っていること自体を先に伝えればいいのです。
2. 黙ってから話す
質問されたら、すぐに口を開かない。数秒だけ黙って、頭の中で結論を作ってから話し始める。
最初は、この沈黙がとても怖く感じます。「早く答えないと」と焦る。でも実際にやってみると、数秒の沈黙を気にしている人は誰もいませんでした。むしろ「ちゃんと考えてから答える人」に見えます。
焦って話し始めて5分迷走するより、5秒黙ってから1分で話すほうが、相手の時間も自分の評価も守れます。
3. 変えるときは、変えると言う
意見を変えること自体は、悪いことではありません。変わったことを伝えないのが問題なのです。
「さっきAと言いましたが、予算の話を聞いてBに変えます」
ひとこと添えるだけで、印象がまるで変わります。コロコロ変わる人ではなく、情報を受けて判断を更新できる人になります。
私はこの3つだけで、「話が分かりにくい」と言われることがほとんどなくなりました。性格は何ひとつ変えていません。
それでもイライラされた時、壊れないための考え方
ここまで対策を書きましたが、全部やっても、イライラされるときはあります。そのときに覚えておいてほしいことを、最後に書いておきます。
相手の機嫌の全責任を、あなたが背負う必要はありません。
相手がその日たまたま疲れていた。締切に追われていた。あなたとは関係のない理由で消耗していた。そういうことは、いくらでもあります。人の機嫌は、あなただけで決まるものではありません。
それから、これは声を大にして言いたいのですが。
気にしすぎて何も言えなくなるほうが、現場にとっては損失です。
考えながら話していた頃の私は、少なくとも発言はしていました。もし「うまく話せないから黙っておこう」と決めていたら、あの現場で必要だった指摘は、誰の口からも出ないままだったと思います。
伝わり方は直せます。でも、黙ってしまったら、直す機会そのものがなくなります。
あなたが今、自分の話し方を気にして検索しているのは、周りをよく見ている証拠です。その目は、癖さえ直せば、そのまま強みになります。
次の打ち合わせで、結論を先に言う。今日やることは、それだけで十分です。

気にしてる人ほど、実は大丈夫なんだ。黙ってしまうより、下手でも言い続けたほうが現場のためになる。それだけは忘れないでね。
まとめ
- 「人をイライラさせてしまう」と気にしている人は、たいてい本当に厄介な人ではない
- 原因は性格ではなく、限られた場面の癖。だから直せる
- 考えながら話すと、内容ではなく「待たされること」が相手を消耗させる
- 対策は3つ。結論を先に置く/数秒黙ってから話す/変えるときは変えると言う
- 全部やってもイライラされる日はある。相手の機嫌の全責任を背負わなくていい
よくある疑問
Q. 考えながら話す癖は、そもそも直せるものですか?
直せます。性格ではなく話す順番の問題なので、「結論を先に言う」と決めるだけで大きく変わります。私自身、この1点を意識するようになってから「話が分かりにくい」と言われることがなくなりました。完全になくすというより、出そうになったら気づける状態を目指すのが現実的です。
Q. 結論を先に言おうにも、結論が出ていないときはどうすればいいですか?
「今はこう考えている」という途中経過を結論として先に置いてください。「A案に傾いていますが、予算だけ確認したいです」で十分です。迷っていること自体を先に伝えれば、相手は着地点を持てます。迷いを隠そうとして話が長くなるほうが、よほど伝わりません。
Q. 自分がイライラさせているかどうか、どうすれば分かりますか?
いちばん確実なのは、信頼できる人に直接聞くことです。「自分の話し方で分かりにくいところはありますか」と聞けば、たいてい正直に教えてもらえます。周りの反応から推測しようとすると、悪いほうに考えすぎて疲れるだけなので、聞いてしまったほうが早いです。


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