働きやすい職場とは?残業が多くても辞めたくなかった現場の話|PMO30年の答え

働き方・キャリア
おかかくん
おかかくん

上司に「働きやすいチームにしていこう」って言われたんだけど……働きやすいって、何?リモートにするとか、残業を減らすとか、そういうことなの?

おにぎりさん
おにぎりさん

よく聞く言葉なのに、いざ説明しようとすると難しいよね。今日は、現場を30年見てきた私の実体験から考えてみよう。

求人票でよく見かける「働きやすい職場です」という一文。リモート可、残業月平均20時間、有休取得率80%。数字が並んでいると、たしかに安心します。

でも、IT現場で30年働いてきて「ここは働きやすかったな」と今でも思い出す現場を振り返ると、どうも条件の良さと一致しないんです。正直に言うと、いちばん働きやすかった現場は、残業だらけでした。

制度と働きやすさのズレはどこから来るのか。30年分の実体験から、言葉にしてみます。

「働きやすい職場」と聞いて、まず思い浮かぶもの

働きやすさの話は、たいてい制度から始まります。リモートワーク、フレックス、残業時間、休暇の取りやすさ、評価制度。転職サイトの「働きやすい会社ランキング」も、だいたいこの軸で並んでいます。

先に言っておくと、制度は大事です。土台です。残業が常態化して健康を削るような職場は、論外です。

ただ、制度で全部が説明できるなら、「条件のいい会社に転職したのに、なぜかしんどい」という人は存在しないはずです。実際には、います。私も何人も見てきましたし、私自身がそうだった時期もあります。

つまり、働きやすさには制度だけでは説明のつかない「もう一層」があります。全体像を図にすると、こうなります。

働きやすさは「二層」でできている チームの空気の層 冗談を言い合える / 困ったら頼れる 仲間とやっている感 / 一人で抱えなくていい ※ 入ってみないと分からない・求人票の数字に出ない 制度の層(土台) リモート / 残業時間 / 休暇 / 評価制度 ※ 求人票に書いてある・比べやすい 体感を決めるのは こちらの層 大事だが、 これだけでは半分 制度の上に、空気が乗っている
図1:働きやすさは「制度の層」と「チームの空気の層」の二層でできている

残業が多いのに「働きやすかった」現場の話

30年で「働きやすかった現場はどこか」と聞かれたら、迷わず思い出す現場があります。大きなシステム更改のプロジェクトで、正直、残業は多かった。

それでも、辞めたいと思ったことはありませんでした。理由を言葉にするなら「仲間とやっている感」です。チーム全員が同じ方向を向いて、声を掛け合いながら仕事をしている感覚。夜遅くまでかかった日も、帰り道はなぜか嫌な気分ではなかった。山場を乗り切ったときの達成感は、30年たった今でも覚えています。

ちなみに、精鋭が揃った特別なチームだったわけではありません。各自が自立して動いてはいたけれど、みんながみんなエースで4番、という顔ぶれではなかった。それでも、困ったときには気軽に「ここ、助けてほしい」と言えるだけの、精神的な安定感がチームにありました。

誤解しないでほしいのですが、残業の多さを肯定したいわけではありません。あの現場も、残業は減らすべきでした。それでも「働きにくい」とは感じなかった。しんどさはあったけれど、しんどさを一人で背負っていなかったからです。大変だったはずなのに、あの頃の話は、後から思えばぜんぶ笑い話になっている。そういうプロジェクトでした。

おかかくん
おかかくん

残業が多いのに働きやすいって、なんだか不思議だよ?

おにぎりさん
おにぎりさん

条件だけ見たら、つらそうな現場に見えるよね。でも「一人で背負うか、みんなで背負うか」は、求人票の数字には出ないんだよ。

制度は悪くないのに「働きにくかった」現場の話

逆の現場もありました。大きな組織で、制度も条件も悪くない。それなのに、働きにくかった。

何が違ったのか。あの現場は、一人一人が個別に動いている感じがしたんです。隣の席の人が何をしているのか分からない。自分の作業が全体のどこにつながっているのかも見えない。困ったことがあっても、誰に聞けばいいのか分からない。

組織はでかいのに、孤独。毎日が「割り当てられたタスクを黙って消化するだけ」になると、職場は静かに働きにくくなっていきます。制度の数字は、どこも悪くないままで、です。

二つの現場を並べると、働きやすさの正体が見えてきます。「一人で抱えなくていい」という感覚。これが、制度の層の上に乗っている「チームの空気の層」の中身です。

30年でたどり着いた答え──「どこからともなく手が差し伸べられる」職場

では、空気の層が健全なチームとは、具体的にどんなチームなのか。私のイメージははっきりしています。

普段は冗談を言い合えて、軽口を叩ける。それくらい肩の力が抜けている。でも、障害やトラブルが起きたときには一致団結して乗り越える。誰かが支え役で、誰かが引っ張り役、と決まっているわけでもない。困っていたり悩んでいたりする人がいると、「誰が助ける」と相談するまでもなく、どこからともなく手が差し伸べられる。そういう独自の雰囲気を持ったチームです。

心理的安全性という言葉があります。「これを言ったら変に思われるかな、と心配せずに発言できる状態」のことです。近い概念だと思いますが、横文字にすると急に自分から遠くなる気がするので、私は昔から「手が差し伸べられる職場」と呼んでいます。

働きやすい職場とは何か、と聞かれたときの私の答えはこれです。制度の数字ではなく、困ったときに手が伸びてくるかどうか。

新米リーダーが明日からできる、3つの小さなこと

「じゃあ空気を良くしよう」と思っても、制度と違って空気には設定画面がありません。でも、30年見てきて、空気のいいチームのリーダーがやっていたことは、だいたい共通していました。どれも小さなことです。

1. リーダーが先に「わからない」と言う

メンバーは、リーダーの振る舞いから「このチームで何を言っていいか」を学びます。リーダーが弱みを見せないチームでは、メンバーも「困っています」と言えません。先に「ここ、わからないから教えて」と口に出すのは、リーダーの仕事のうちです。

2. 雑談と軽口を潰さない

静かなチームは集中しているように見えて、助けを求める声も出ないチームです。冗談や雑談は、無駄話に見えて、困ったときに声を掛け合うための土壌です。潰しにいかない。できれば、自分から一つ投げる。

3. 気づいたら、そっと隣に行く

「何かあったら言ってね」は、実はあまり機能しません。困っている本人ほど「これくらいで呼んだら悪いかな」と考えてしまうからです。詰まっていそうな人に気づいたら、こちらから隣に行って「それ、どうなってる?」と聞く。リーダーが手を差し伸べる姿を見せていると、メンバー同士も真似し始めます。「どこからともなく手が差し伸べられるチーム」は、ここから育ちます。

空気を変える 3つの小さな行動 1. リーダーが先に「わからない」と言う 弱音を言っていい空気は、リーダーの一言から 2. 雑談と軽口を潰さない 助けを求める声が出る「土壌」を守る 3. 気づいたら、そっと隣に行く 手を差し伸べる姿を、チームに見せる 空気は、小さな行動から変わる
図2:空気を変える3つの小さな行動
おかかくん
おかかくん

制度はぼくには変えられないけど、この3つならできそうだよ!

おにぎりさん
おにぎりさん

うん。空気は、リーダーの小さな行動から少しずつ変わっていくものだよ。

「働きにくい」と感じるのは、甘えじゃない

最後に、リーダーではない立場でここまで読んでくれた方へ。

制度の整った会社にいるのに、なんだか働きにくい。周りは普通に働いているように見えるから、「そう感じる自分が甘えているのかな」と不安になっている人がいるかもしれません。

その感覚は、甘えではありません。孤独感は求人票の数字に出ないだけで、確かに存在します。制度が立派でも、空気の層が痩せている職場は実際にあります。あなたのセンサーは正しく働いています。

そして、空気は双方向です。もし少しだけ余力があるなら、隣の人に軽い雑談を一つ投げるところから始めてもいい。あなたのその一言が、誰かにとっての「差し伸べられた手」になることもあります。

よくある質問

働きやすい職場かどうかは、制度(リモートや残業時間)だけで決まりますか?

制度は土台ですが、それだけでは半分です。同じ制度でも「困ったときに手が差し伸べられるか」というチームの空気によって、体感の働きやすさは大きく変わります。転職や異動の際は、制度の数字に加えてチームの雰囲気を確かめるのがおすすめです。

残業が多い職場は、働きにくい職場ですか?

残業の多さ自体は改善すべき課題で、放置してよいものではありません。ただし体感の働きにくさと常にイコールではなく、筆者が30年で最も働きやすいと感じた現場は残業の多い現場でした。しんどさを一人で背負うか、チームで分け合えるかの違いが大きく影響します。

チームを働きやすくするために、リーダーが最初にできることは何ですか?

リーダー自身が先に「わからない」「困っている」と口に出すことです。メンバーは「このチームでは弱音を言っていい」と学び、助けを求める声が出やすくなります。雑談を潰さないこと、困っていそうな人の隣にそっと行くことも効果的です。

まとめ|働きやすさは、手が差し伸べられるかどうか

  • 働きやすさは二層でできている。制度は土台、体感を決めるのは「チームの空気」
  • 空気の正体は「一人で抱えなくていい」という感覚
  • リーダーは制度を変えられなくても、空気は小さな行動で変えられる

明日、チームの誰かが困っていそうに見えたら、そっと隣に行ってみてください。働きやすい職場は、求人票の数字からではなく、その小さな一歩から始まります。

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